笑い塾⑮ スマイル度を測る

 表情の中で「笑顔」は不思議な働きをする。病室の友を見舞って、患者が笑顔で出迎えてくれたら、まずはそれだけで救われた気持ちになる。通りすがりの挨拶でも、相手に笑顔があると何か穏やかな気持ちが流れる。会議に遅れてきた人にも笑顔があると、強く叱れなくなる。ボランティアで作業を手伝って、ホッと一息ついたら、みんな笑顔で汗を拭いている。気持ちのよい瞬間だ。仲間に素敵な笑顔の人がいたら、それだけでまわりの空気が明るく感じられる。
 しかし、普段から笑顔の少ない人はいる。別に怒っているわけでもないが、笑顔が出にくいのである。また自分では笑顔がある積りでも、他から見るとそうでもない人もいる。普段は笑顔がある人でも、深刻な悩みがあったり、病気になったり、問題を抱え込むと、笑顔が消えてしまうということがある。
 笑顔は無意識的に自然と出る場合と、相手や状況に合わせて意識的に作り出す場合があるが、いずれにしろ、笑顔は他から見られるもので、カメラに撮ることができる。カメラに撮って「スマイル度」を測定する技術が登場した。
 オムロンが、「スマイルスキャン」という技術を開発したのである。去る4月、日本笑い学会では、「オープン講座」にオムロンの「ソーシャルセンサソリューション事業部」の人を招き、「スマイルスキャン」の紹介と実際の測定をしてもらった。カメラに向かってすわり、笑顔を作りパソコンに顔を映しだす。すると、パソコンは直ちに測定を開始して、瞬時に「笑顔度」を数値で表示してくれる。笑顔の度合いは0~100%の間で判定される。私も実際にカメラの前に座り「ニッ!」とやってみた。89%と出る。他の人の数値では95%と出ている人もあって、私の笑顔度は低いのかなと思っていると、45%しか出ないという人もいた。この人は、笑顔しているのにどうして低いのだろうと不思議がっていた。因みにアメリカのオバマ大統領の笑顔は98%、かの有名な「モナリザの微笑」は17%と出るそうだ。
 オムロンの説明では、この「スマイルスキャン」の基礎には、500万枚の笑顔情報のデータベースがあり、それを基に特別のソフトウエアが開発され、目や口の形や顔のしわなどの情報を測定して、「笑顔度」を算出することを可能にしたという。
 「スマイルスキャン」には個人別に笑顔測定の履歴を記録しておくことが出来、その中で最高度の笑顔画像が取り出せるし、笑顔度を高めるトレーニングも出来るという。
 まず笑顔が自然に出てこない人や少ないと感じている人にとっては、トレーニングの有力な技術となるだろうし、笑顔のある人にとっては、笑顔度を確認して自信をもつことができるだろう。作り笑顔であろうと、自然な笑顔であろうと、500万枚の顔画像の情報には全てが含まれていると考えられるから、すごいソフトが作られたものだと思う。 漠然とした笑顔が、「笑顔度」という数値で測られることは、「笑いの科学」に通じる試みと言える。あってもなくてもよい笑顔ではなくて、「笑顔」の大切さを再認識させるよい機会が与えられたように思われる。(2010年6月号)

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