笑い塾⑪「ユーモア」授業の思い出

 皇學館大学社会福祉学部が2011年3月末で名張市から撤退するという。高齢化が急速に進む地域社会にあって、若者が集まる大学が消えるのは何ともさびしいかぎりである。市民も自由に使えた大学図書館も無くなり、地域の一大教育資源が消え失せることになるわけだ。社会福祉学部にあっては、私にも大事な思い出があるので記しておきたい。
 私は関西大学を退職してから3年間、非常勤講師として、社会福祉学部の授業を担当していた。2004年度から2006年度までの3年間であったが、週に1度の通年授業であった。授業は火曜日の2限目で、自宅から車で20分もあれば余裕でキャンパスに着けた。私が通っていた関西大学は長時間通勤であったので、自宅から車で簡単に通えるのが夢のようであった。非常勤講師なので、自前の研究室はなかったが、図書館にある個室を借りて1日を過ごすことができた。キャンパスは丘の上にあって、眺望は抜群に良く、春秋の天気の良い日は、キャンパスで過ごすのがとても楽しかった。
 私の担当した授業は「外書講読」と言って英語の原書を読む授業で、英語そのものの授業ではなく、原書の内容を読み取るのが目的の授業であった。英語であれば何を読んでもよいということではなく、社会福祉を学ぶ学生に役に立つ英書を読んでくれるようにという条件がついていた。私は「ユーモア」に関する本を選んだ。ユーモアについて書かれた英書は多くあって、特に社会的効用を説く本は、学生が社会福祉の現場に出たときに必ず役に立つと思った。
 私は、アメリカのユーモア研究で著名なジョン・モリオールという人の『HUMOR WORKS』(1997)という本を取り上げた。翻訳が出ていないので、学生達は苦労したようだが、内容が面白かったので学生には喜んでもらったと思う。全員の学生が、「笑いとユーモア」についてこんな話は初めて聞いたということで、発見と楽しさがあったようである。英語そのものを教える授業ではないので、英語で読みとっていく楽しさを味わってもらい、「笑いとユーモア」の効用を理解してもらうことに努めた。英語そのものにつまずく学生もいたが、大半の学生は、ユーモアの効用を理解することに興味を示してくれていた。「笑いと健康」「ユーモアとコミュニケーション」「ユーモアと精神の柔軟性」など、学生達の「コミュニケーション能力」を高めるヒントが詰まっていた。
 授業を終えると丁度昼の時間で、私はそのまま大食堂に向かう。大勢の学生に混じって食事をするのも楽しかった。学生と同席する時もあったし、聞こえてくる学生達の会話も新鮮であった。食後の散歩は、整備された立派なグラウンドや体育館を見て回り、最後に図書館の個室に戻る。自由に本を見て回り、気儘に興味のある本を手に取ったり、カレント雑誌に目を通したり、持ち込んだパソコンで原稿を書いたり、気儘に過ごせた時間は、私にとっては至福の時間と言ってよかった。3年間心地よく「笑いとユーモア」の授業ができたことに感謝しながら、あんな立派な教育施設がまるごと消えてしまってよいのだろうかと思わずにはおられない。(2010年2月号)

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