笑い塾①ザ・ドリフターズの笑い

①デジタルテレビの中に見る ザ・ド リフターズの笑い

 2011年を期して、テレビ放送が全面的に「デジタル化」されるという。それまでに、デジタル受信機の普及をはかっておかなければと、各テレビ局はPRに熱心である。友人との会話でも、「テレビはどうした?」という話題もよく出るが、デジタルの大型テレビに買い換えたという話をよく聞くようになった。「世界遺産なんてきれいに映って最高だ」などと聞かされて、我が家もついにデジタルテレビに買い換えた。きれいな画像を楽しもうとすれば当然大型となる。
 人間の視覚というのも勝手なもので、最初は「きれいな画像だ!」と感心していたが、見なれてくると、それが当たり前になってくる。大型も、最初は「迫力がある」などと喜んでいたが、それも直ぐに慣れてしまう。私は漫才などの「お笑い」ものを好んで見るが、拙い新人の瞬間芸を見ていると、画面との違和感を覚えてしまう。技術の豊かさに内容がついていってないという感じか。「大型フルハイビジョン」にはとても対応していないと思ってしまう。
 ところが、そんな思いを吹き飛ばしてくれる番組があった。それもアナログ式で録画された番組の再放送であった。ザ・ドリフターズの『8時だヨ!全員集合』(TBS系)である。舞台中継の番組で、舞台一杯にセットを組んで、このセットが演者と一体となって「お笑い」を作りだすのである。スケールの大きいお笑いバラエティーとも言うべき案組で、ザ・ドリフターッズの面々が七転八倒、体を張ってコメディーを演じるのである。この再放送が、大型画面にぴったりと収まっているのに感心したが、なによりも嬉しかったのは、お腹を抱えて笑わせてくれたことであった。これぞ大型フルハイビジョンの迫力ではないかと思ったほどであった。最近、テレビを見てこれほどに笑った番組はない。
 『8時だヨ!全員集合』は、1969年に始まり1985年に終わった番組であったが、70年代から80年代の半ば頃までは人気が絶えない番組で、その頃に子供時代をすごした少年達は幸せであったと言うべきだろう。1週間に一度は大笑いできる番組があったのである。人気の高かった70年代の前半では、毎週視聴率ナンバーワンを維持していた。しかし、親たちの人気は、子供の教育に悪いという理由で、PTA調査では、ワースト番組ナンバーワンであった。ケーキやパイの投げ合い、生卵や西瓜のつぶし合いや水のかけ合いなど、子どもたちが普段できそうにもない遊び、周囲を混沌の渦に巻き込んで痛快がる、豪快ないたずらゴッコがあったのである。とりわけ志村けんと加藤茶とのやり合いは抱腹絶倒となる。彼らの体当たり的猛烈演技は、生傷が絶えないだろうなと思わせられるほどの熱演である。
 今や彼らのコメディーはDVDとなって市販されているが、テレビ上での時々の再放送は、いまでも十分に見応えがある。今日のお笑いバラエティーは、一人芸にしろコント芸にしろ小さくまとまって迫力がなく、テレビが大型であるだけに小さく見えてしまう。
 『8時だヨ!全員集合』には、ドリフのコメディアンばかりではなく、放送局そのものに「お笑い」を提供するというまじめな思想があったと思う。

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